ワクチン接種 #2

作成: 令和3年2月22日, 編集: 2月25日, 創価大学理工学部 畝見達夫

注意:3月5日までのワクチン接種に関するシミュレーションで,確率計算の式に一部間違いがあり, 1回接種後数日で80%ほど抑止効果が出る設定になっていました。以下のシミュレーションは このバグ未修正のシミュレーションですので、それを前提にご覧ください。正しい設定でのシミュレーション が出来次第、差し替えます。

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

新型コロナウイルスに対応するワクチンの開発が進み,米国,英国などでは接種が始まった。 日本における接種の開始時期と実施の速さについては,まだ不確定であるが, ここでは,開始時期と実施速さの影響をは把握する目的で,いくつかのバリエーションについてシミュレーションを行う。

先のシミュレーションの結果を踏まえ, 緊急事態宣言下の集会頻度が4%から0.75%に縮小したと仮定し, 緊急事態宣言解除と一般へのワクチン接種開始の時期の組み合わせについて, 1日あたりのワクチン接種数の違いによる感染の変化についてシミュレーションを実施する。

シミュレーション

緊急事態宣言解除日を3月7日,14日,21日の3通りについて, 解除日から集会頻度が2% あるいは 3%となったと仮定し, 一般を対象とするワクチン接種開始を4月1日と5月1日の2通りについて, それぞれ,1日あたりの接種数を人口の0.1%,0.2%, 0.4%, 0.8%, 1.6% の5通りについて 各40回のシミュレーションを実施する。 パラメータは先のシミュレーションと同じ設定である。 ワクチン接種開始日までの二乗誤差の意味で最も平均に近いケースからの継続の推移をシミュレートする。

集会頻度 2% の場合(年末の半分)

下の左側(あるいは上側)に陽性判明者数の推移、右側(あるいは下側)に感染者数の推移を示す。

vaccineB_F2_TP36_02 vaccineB_F2_IN36_4

左中段および下段が許容可能なシナリオを含むものと考えられる。 左中段は,3月14日解除,4月1日接種開始の場合であり, ワクチン接種は1日あたり人口の0.4%以上の実施が望まれる。 下段は3月21日解除の場合であり,左欄の4月1日開始なら 0.2%以上, 右側の5月1日開始なら0.4%以上の実施が望まれる結果となっている。

これら3つの場合についての2月28日からの推移を拡大表示した図を下に示す。 上から順に3月14日解除4月1日接種開始、3月21日解除5月1日接種開始,3月21日解除4月1日接種開始で, 下ほど再拡大を抑制できている。

vaccineB_F2_36_E

集会頻度 3% の場合(年末の3/4)

下の図に陽性判明者数の推移を示す。 右側(あるいは下側)は縦軸の最大値を 0.02% に制限したものである。

vaccineB_F3_TP36 vaccineB_F3_TP36_02

下の図に感染者数の推移を示す。 右側(あるいは下側)は縦軸の最大値を 0.4% に制限したものである。

vaccineB_F3_IN36 vaccineB_F3_IN36_4

ほぼ全ての場合でワクチン接種を実施しても再拡大を防げない。 3月21日解除,4月1日接種開始の場合のみ,1日あたりの接種数を人口の 0.8% 以上確保できれば, 許容可能な範囲に抑えつつ7月には終息させることが期待できる結果となっている。 これは,125日で全員の接種を終える速さが要求されることを意味しており, 全員接種完了とともに終息するということになる。

結果から示唆されること

宣言解除後の感染リスクが年末の3/4の場合には,再び感染が急拡大し, ワクチン接種を急いだとしてもその抑制効果が追いつかず,3度目の緊急事態宣言を余儀無くされる可能性がある。 気温の上昇に伴い,換気の励行や,野外での会食に置き換えられれば,感染リスクが減少し, 上に示したような急拡大は起きない可能性もあるが,感染リスクを年末の半分以下に抑え, ワクチン接種により終息を目指したいところである。

感染拡大と,それを抑制するワクチン接種の競争のような状態になることが分かる。 ワクチン接種の迅速さが,許容可能な人と人との接触の度合いを決めることとなろう。 いずれにせよ,終息宣言が可能となるまでは,緊急事態宣言を解除したとしても, 昨年末に見られたような高感染リスク状況を避けることが必須であろう。