進化する恋人たちの社会における高速伝記

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愛と性は、様々な時代と地域において、幅広く人々の興味の対象となってきました。 これらの言葉は、詩、小説、演劇、映画、絵画、彫刻、音楽など、ほとんどあらゆる形態の芸術の主題として取り上げられています。 愛は互いに惹かれ合う人と人の関係の上に成り立ちます。 「美しい」という形容詞が殊に女性に対して使われるという事実から考えると、進化心理学の視点から、魅了を美学の起源の1つと仮定することもできそうです[1]。

美の進化的起源を追求する科学研究を目的とし、私たちは進化する恋人たちの社会を模擬するエージェントベースのシミュレータを開発しました。 2次元仮想世界の中に数千のエージェント集団が生き、動き回ります。 各エージェントは各自固有の物理的な姿と心理的な好みを、伴性遺伝をともなう先天的形質として備えるものとします。 エージェントは好みに合った姿をした他のエージェントに近寄ろうとします。 もし2つのエージェントが互いに魅力を感じ、十分な期間いっしょにいた場合、彼らが異性同士だった場合には、女性エージェントが子供を産めるものとします。 姿と性別の対応をあらかじめはっきりと割り当ててはいないので、ランダムな遺伝子を割り当てられた初期集団では、同性愛カップルが半数を占めることになります。 しかし、異性カップルだけが子孫を残せるという利点により、性的二型、つまり、雌雄間の形質の分離に向かって進化します。 出会いを容易にするため、エージェントは好みの相手に求愛し、同意か拒否の返事を待つことができます。 さらに、積極性、誠実さ、寛容さ、妥協など、他の形質も取り入れました。

このシミュレータは科学研究だけでなく、膨大な数のエージェントたちの伝記を高速に生成するある種の生成的芸術としても有用です。 半月を1ステップとするシミュレーションにより、仮想空間内の人の一生は約1分間で計算されます。 つまり、1分間に数千の人生の物語が生成されます。 インスタレーションでは記号化された恋人たちが仮想世界で動き回る様子と共に、6個のサンプル個体の人生の出来事を文章で画面に表示します。 同時にコンピュータの発話合成機能を使って読み上げます。 あるサンプル個体が亡くなると、次に誕生する個体で置き換えます。 仮想空間内の人々はランダムに割り当てらた固有の名前で呼ばれます。

  1. Denis Dutton, The Art Instinct: Beauty, Pleasure, & Human Evolution, Bloomsbury Pub., 2010.

論文

  1. T. Unemi and D. Bisig: Rapid Biography In A Society Of Evolutionary Lovers, Proceedings of the 20th Generative Art Conference, 431-441, Ravenna, Italy, December 2017. PDFファイルはこちら。

このシミュレータは macOS X 10.12 の上で動作します。
画面の配置は、フルHD (1920×1080 画素) 用に設計されています。

Created on September 18, 2017. Updated on February 14, 2018.