感染拡大に対する集会制限の効果#1

作成: 令和3年1月17日, 創価大学理工学部 畝見達夫

背景

令和2年11月下旬ころから再び感染が拡大し1月7日に政府から東京を中心とした1都3県を対象に緊急事態宣言が出された。その時点での東京都における陽性判明者数から推定される実効再生産数は約 1.05 と考えられ,先のシミュレーションでは,それを前提に地域内長距離移動の制限,および,集会頻度の制限について,その効果を知るためのパラメータ設定を行なった。

ここでは,そこで用いた感染率を変化させ,先のシミュレーションで効果が期待できると判断された集会頻度の制限について,感染拡大の速度が異なる場合にどの程度の効果があるかを調べる。

シミュレーション

20日目から集会頻度を20%,50%,80%抑制したそれぞれの場合の感染者数の推移を調べる。 先のシミュレーションでは感染率を50%としたが,ここでは,40〜90%の範囲で10%刻みに変化させ,推移の違いを見る。

パラメータ値の一覧はこちらを参照のこと。

20%抑制した場合

下のグラフは集会頻度を20%抑制した場合について20回のシミュレーション結果の平均の推移である。 破線は,抑制しない場合である。

80%

下の図は,前半100日分の感染率の低い部分を拡大したグラフである。

80%

全シミュレーションについての個々の推移はこちらを参照されたい。 20%程度の抑制でも効果は認められ,ピーク時の感染者数を20%以上低く抑えられるが,感染率が現状程度では終息までに期間が必要で,現在の想定である緊急事態宣言1ヶ月にはほど遠い。

50%抑制した場合

下のグラフは集会頻度を50%抑制した場合について20回のシミュレーション結果の平均の推移である。 破線は,抑制しない場合である。

80%

下の図は,前半100日分の感染率の低い部分を拡大したグラフである。

80%

全シミュレーションについての個々の推移はこちらを参照されたい。 抑制の効果は認められるが,1ヶ月での収束は難しい。

80%抑制した場合

下のグラフは集会頻度を50%抑制した場合について20回のシミュレーション結果の平均の推移である。 破線は,抑制しない場合である。

80%

下の図は,前半100日分の感染率の低い部分を拡大したグラフである。

80%

全シミュレーションについての個々の推移はこちらを参照されたい。 抑制の効果により1〜2ヶ月での終息が期待できる。

結果から示唆されること

感染拡大の速度が異なる場合の集会頻度抑制に効果について,シミュレーションにより調べた。 20%の抑制でも効果はあるが,感染率が現状程度では終息までに数ヶ月を要することが予想される。 50%で2ヶ月程度,80%抑制できれば1ヶ月程度での終息が期待できそうである。 感染リスクの高い集会を抑制することが重要で,実効性のある対策が望まれる。