令和3年1月の緊急事態宣言の解除戦略 #1

作成: 令和3年1月30日, 編集: 1月31日, 創価大学理工学部 畝見達夫

背景

1月7日に東京都および隣接する3つの県に対して政府から緊急事態宣言が出され, 不要不急の外出の抑制と午後8時以降の飲食店営業自粛の要請が出され, 多くの都民・県民および域内飲食店の協力により,日毎の陽性判明者数は減少に転じた。 しかし,これまでに経験した第1および第2波では,終息しきれず期間を経て再び感染が拡大した。 特に第1波の際には,会食,イベント,旅行などの制限により,感染を押さえ込んだにも関わらず, 規制の緩和から1ヶ月ほどで大都市を中心に感染が再拡大し,都道府県を跨ぐ移動により, 全国での感染拡大が再燃した。これらの経験から,緊急事態宣言の解除や規制の緩和については, 十分な慎重さが必要と考えられる。

先のシミュレーションでは,緊急事態宣言に伴い抑制される地域内長距離移動の制限,および,集会頻度の制限について,その規模と効果の関係について調べた。 ここでは,宣言から1ヶ月後に規制の緩和を開始し規制以前の活動規模へ徐々に戻すものと仮定し, その期間が感染の推移に及ぼす影響を調べる。

計算環境の整備に伴い,規模を拡大し,人口25万人の設定でシミュレーションを実施した。

シミュレーション

20日目から集会頻度を40%,50% あるいは 60% 抑制し, 抑制開始から30日後に当たる50日目から抑制の割合を徐々に0%に変化させ, 0%に戻るまでの日数を 0, 3, 7, 10, 14, 21, 28, 42, 60 の 9 通りに変えて, 推移の違いを見る。

パラメータ値の一覧はこちらを参照のこと。

40%抑制した場合

下のグラフは集会頻度の抑制が40%にとどまった場合について20回のシミュレーション結果の平均の推移である。

80%

下の図は,陽性判明者数の推移であり,縦軸は人口に対する割合である。

80%

全シミュレーションについての個々の推移はこちらを参照されたい。

50%抑制した場合

下のグラフは集会頻度を50%抑制できた場合について20回のシミュレーション結果の平均の推移である。

80%

下の図は,陽性判明者数の推移であり,縦軸は人口に対する割合である。

80%

全シミュレーションについての個々の推移はこちらを参照されたい。

60%抑制した場合

下のグラフは集会頻度を50%抑制できた場合について20回のシミュレーション結果の平均の推移である。

80%

下の図は,陽性判明者数の推移であり,縦軸は人口に対する割合である。

80%

全シミュレーションについての個々の推移はこちらを参照されたい。

結果から示唆されること

緊急事態宣言に伴う集会の抑制により,ある程度感染が抑制された後に, 規制を緩和する場合,どの程度の期間をかけて元の条件に戻すのが適切か調べるためのシミュレーションを実施した。 抑制が40%では,緩和に1ヶ月掛けても緩和完了の直後から感染拡大が再開した。 一方,50%の抑制ができていれば, 1ヶ月以上掛けて緩和することで終息へ向かうことが期待できそうである。 シミュレーションの上では, 宣言から1ヶ月後の陽性判明者数は,40%抑制で人口の0.0077%,50%抑制で人口の0.0047%,60%抑制で人口の0.0034%である。 つまり,東京都で言えば活動人口を約1000万人と仮定して,その0.0047%にあたる 470人程度に下がっていなければ,宣言の解除を延期すべきとも考えられる。