作成: 令和3年2月10日, 創価大学理工学部 畝見達夫
SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書
1月7日に東京都および隣接する3つの県に対して政府から緊急事態宣言が出され, 日毎の陽性判明者数は減少に転じたが,当初の期限であった2月7日までに十分な減少が見込めないとの判断から,栃木県を除く10都府県で期限を3月7日まで延長された。 解除時期の決定は,陽性判明者数等の状況を見て判断する必要があるが, 解除を遅らせれば感染拡大は防げる反面,経済活動の停滞による損失が拡大する。 経済損失の予測研究との協同を考えるため,ここでは先のシミュレーションの結果を踏まえ,集会頻度を40%抑制したと仮定し, 解除時期を2月14日から4月4日まで間の1週間隔で設定した場合についてシミュレーションを行う。 段階的解除は行わず,解除後ただちに宣言前の活動に戻るものと仮定する。
20日目から集会頻度を40%抑制し,元の活動量に戻る日付を, 2月14日,21日,28日,3月7日,14日,21日,28日,4月4日とした各場合について, 推移の違いを見る。人口は 25万人,36万人,49万人の3通りについてシミュレーションを試みる。
陽性判明者数の推移の50試行の平均を示す。
緑の太線は,東京都における陽性判明者数の週平均で,感染に関わる人口を800万人と想定した場合の比率である。 宣言解除時の陽性判明者の人口に対する割合は以下の表の通りである。 表中の数値は人口10万人当たりの人数である。
\(\times 10^{-5}\) | Feb 14 | Feb 21 | Feb 28 | Mar 7 | Mar 14 | Mar 21 | Mar 28 | Apr 4 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
25万人 | 5.856 | 3.816 | 3.656 | 2.880 | 2.496 | 2.400 | 2.128 | 1.608 |
36万人 | 6.089 | 4.722 | 3.467 | 2.933 | 2.650 | 2.583 | 1.772 | 1.678 |
49万人 | 5.665 | 4.278 | 3.726 | 3.082 | 2.682 | 2.139 | 2.253 | 1.988 |
下に感染者数の推移を示す。
全シミュレーションについての個々の推移は以下のリンク先を参照されたい。
陽性判明者数の推移 | 感染者数の推移 | |
---|---|---|
25万人 | 陽性判明者数の推移 25万人 | 感染者数の推移 25万人 |
36万人 | 陽性判明者数の推移 36万人 | 感染者数の推移 36万人 |
49万人 | 陽性判明者数の推移 49万人 | 感染者数の推移 49万人 |
拙速な解除は直ちに再拡大を招くことが示唆される。また,その再拡大は人口規模が大きいほど速くなる。 ここでの結果からは,4月4日まで解除を遅らせれば,その後の感染拡大もかなり抑制できると考えられる。 ワクチン接種が4月に開始でき,十分迅速に実施できるものと仮定すると,3月14日解除が妥当と推測される。 ただし,上述の示唆は状況が平均的な数値で推移した場合であり,全シミュレーション結果のグラフから分かる通り,3月14日解除ではまだ分散が大きく,確実な終息を目指すなら3月28日まで延期するのが妥当であろう。