第3回目緊急事態宣言の解除戦略

作成: 令和3年6月13日, 創価大学理工学部 畝見達夫

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

令和3年4月下旬から大都市圏を中心に順次発令された緊急事態宣言について, 6月20日が宣言の期限とされている。大阪、兵庫、岡山、広島などでは感染者数の減少により, 6月20日での解除あるいはまん延防止重点措置への移行が現実味を帯びてきたが, 東京、北海道、沖縄については,減少傾向にあるとはいえ未だ感染者数が多い状況にある。 特に東京では減少幅が小さく,宣言の延長も必要となるかもしれない。 このような背景を踏まえ,解除を延期した場合のシナリオをもとにシミュレーションを行い, 結果を比較する。

シミュレーション

人口規模 64万人について,人口分布を含めたのパラメータ設定を 都議会議員選挙およびオリンピック・パラリンピックの影響 と同様の設定で,宣言の期限を 6月20日,6月27日,7月4日としたそれぞれの場合についてシミュレーションを行う。 都議会議員選挙期間中およびオリンピック・パラリンピック開催期間中の集会頻度が, その直前の \(\alpha\) 倍(パラリンピックは \(\alpha/2\) 倍)に増えると考え, \(\alpha\) の値が 1, 1.2, および 1.5 の3とおりの場合, さらに,3月末の解除時点は 1.1% だった宣言解除後の集会頻度について (1) 1.2% から行事後に 0.1% ずつ増加,(2) 1.4% から行事後に 0.2% ずつ増加の2とおりの場合の それぞれに64回の試行を行う。

下に上述の (1) の場合の平均値と標準偏差の推移を示す。

期限陽性判明者数の週平均感染者数
6月20日
6月27日
7月4日

上述の (2) の場合を下に示す。

期限陽性判明者数の週平均感染者数
6月20日
6月27日
7月4日

ここでは,都議会議員選挙およびオリンピック・パラリンピックの影響 と同様に,1日あたりの1回目ワクチン接種数が7月末に人口の 0.4%に達すると仮定している。 これより遅ければピークは遅くかつ大きくなり, これより早ければ早く小さくなると考えられる。

結果から示唆されること

いずれの場合も7月下旬あるいは8月上旬に再度ピークが現れる。 ただし,ピーク時の感染者数は,緊急事態宣言解除の延期日数と, 解除後の集会頻度の増加の具合に依存し, 期限を2週間延期し,その後の人出の増加をある程度抑制できれば,ピーク時感染者数を十分抑制できる可能性がある。

また,都議会議委員選挙やオリンピックの影響は, 同様に解除後の人出の増加をある程度抑制でき,かつ,それぞれの期間の人出の増加を20%以下に抑えられれば, 影響が見えない程度になることが示唆される。

ここでのシミュレーションには8月中旬のお盆休みの影響を加味していない。 それまでにワクチン接種率が十分な割合に達していれば影響は少ないと考えられるが, 今後,定量的な評価を行う必要があろう。