ワクチン最終接種率の影響#1

作成: 令和3年9月8日,創価大学理工学部 畝見達夫

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

先のシミュレーションでは, 最終的なワクチン接種率を人口の70%と仮定していたが, 現状の接種状況をみると,80%近くを達成する可能性も見えてきている。

シミュレーション

シミュレーションのパラメータを 第4回目緊急事態宣言の解除戦略#1 と同様の設定とする。 ただし,行動制限の緩和を9月13日から,最終的な接種率を人口の 80%および90%とし,先の結果と比較する。

下に陽性患者数の推移を示す。上から接種率 70%, 80%, 90% の場合である。 細い折れ線はパラメータとして設定した集会頻度の推移,破線は平均±標準偏差である。

下に感染者数の推移を示す。灰色の細い線は1回目のワクチン接種率の推移であり, 値は右側の目盛りに相当する。 ただし,表示は接種済みにも関わらず感染した個体数を除いた数を示している。

下に重症者数の推移を示す。

6月下旬以降で実データとシミュレーション結果の乖離が見られる。 これは,この頃から増加したデルタ株の重症化速度の上昇を適切にモデル化できていないためと考えられる。

下に市中不顕性感染者数,つまり,隔離されていない無症状の感染者数の推移を示す。

結果から示唆されること

接種率が高いほど年末時点での感染者数は少なくなることが示された。 ただし,このシミュレーションでは最終接種率は 80% と 90% では差は小さく, 目標値として 80% が妥当であることが示唆される。 シミュレーション期間を年内までとしたため,80% と 90% で来年1月以降に差が出る可能性も残されている点には注意が必要である。