オミクロン株の侵入を想定したシミュレーション#2

作成: 令和3年12月16日,創価大学理工学部 畝見達夫

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

11月29日から実施された日本への入国制限の後も, 入国者の経過観察中にオミクロン株への感染が判明するなどの例が出てきており, 検査の感度の限界から,すでに市中に感染者が散財するものと見てよかろう。 英国などでの急速な感染拡大から,日本国内においても今後の感染拡大が予想される。 それに備えて,想定すべき状況を絞るため, いくつかのありうるシナリオに基づくシミュレーションを実施することが有益と考えられる。

シミュレーション

先の報告 に, 3回目接種を行わないことを想定したシミュレーションを追加する。

下に新規陽性患者数の推移を示す。 上が3回目接種を行わなかった場合, 下が3回目接種を2回目接種8ヶ月後に行った場合で 先の報告 からの再掲である。 細い折れ線はパラメータとして設定した集会頻度の推移,破線は平均±標準偏差である。 細い線は1回目のワクチン接種からの接種効果を維持している個体の人口に対する率の推移であり, 値は右側の目盛りに相当する。

いずれの場合も,対策をとらなければ急速な感染拡大により前回第5波のピークを超える可能性が高い。 下に 12月11日以降の分について縦軸の制限を設けずに描画したグラフを示す。

感染力がデルタ株の2倍,ワクチンや治療薬の効果が 25% だった場合, 最大で1日の新規陽性患者数が人口の 1.8% に到達する。 現実には,急拡大の途中で,政府・自治体また会社・学校・個人の対策により, ここまでの拡大は起きないと思われるが, 何も対策を取らなければここまで拡大する恐れを示唆するものである。

11月21日から12月21日までの部分を拡大したグラフを下に示す。

いずれの場合も12月15日以降に上昇の兆しが現れる結果となっている。 この時期については,市中へのオミクロン株の拡散の時期に依存するため, 現段階では予測としての正確さについての判断は難しいが, 空港検疫を逃れた感染者から国内で他の未感染者に感染している可能性があると考えて対策を準備すべきであろう。

結果から示唆されること

いずれの場合も急速な感染拡大の発生が予想される。 3回目接種を2回目接種から8ヶ月後に実施した場合でも, 3回目接種を行わない場合とほぼ同様の感染拡大の恐れがあると思われる。