オミクロン株流行からの出口戦略#2

作成: 令和4年2月22日,創価大学理工学部 畝見達夫

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

2月20日に沖縄など5県ではまん延防止等重点措置が解除となった一方,東京などは3月6日まで延長された。 検査および病床については,逼迫状態がまだ続いており,重症患者数は上昇の傾向にある。 陽性率も 40% 程度で高止まり傾向にある。 3回目のワクチン接種が全国で1日100万件実施が実現されつつあるが, 全体の3回目接種率はまだ十数%であり, 昨年夏のような急速な終息へ向かうに十分な接種数に達するにはまだ期間がかかると思われる。

シミュレーション

先の報告 で用いたパラメータ設定を, 最新動向に合うよう一部再調整を行い,行動制限解除時期について複数の仮定を置いたシミュレーションを実施する。 行動制限の期間を1月21日から45, 59, 73日間の3とおりについて試みる。 解除日はそれぞれ 3月6日,20日,4月3日に対応する。 1日当りの検査数の上限を,東京都の検査数推移から推定し, 1月下旬で人口の 0.21%,その後検査キットなどの在庫の払底により徐々に 0.138% まで下がると仮定する。 それぞれについて128回試行し,陽性患者数,隔離患者数,実感染者数,重症患者数の推移について, 平均値と標準偏差を調べる。

新規陽性患者数の推移

東京都をモデルとした新規陽性患者数の推移を下に示す。

7月4日〜4月末。

12月1日〜4月末。

陽性患者数推移に対する制限解除日影響は小さい。

隔離患者数の推移

自宅療養等も含めた隔離患者数の推移を以下に示す。

東京都の実データとシミュレーションの乖離は,隔離期間の短縮あるいは治療の効果によるものと推測される。

実感染者数の推移

症状の有無および検査にかかわらない,実際の感染者の数の推移を以下に示す。

ピークは3月4日頃で,人口の 13.53±0.25% である。

市中感染者数の推移

偽陰性あるいは検査を受けられず,隔離扱いにならない無発症感染者の数の推移を以下に示す。

重症患者数の推移

以下に重症患者数の推移を示す。

これらは陽性と判定された患者数であり,検査数の不足により判定できず症状が進んだ患者は含まれていない。 実際には,症状が重くなれば判定の有無に関わらず治療を行うことになる。

結果から示唆されること

直近の状況を踏まえたパラメータの見直しと一部モデルの拡張を行い, 行動制限期間の延長の違いの影響についての場合の分析を行なった。 早めの行動宣言解除では感染者数は減っても,重症者数が増加する可能性が示唆された。 具体的な解除日については,さまざまな指標の動向を踏まえた前提を修正により判断することが必要であろう。

課題

ここでは検査対象に擬症状患者を入れていないため,シミュレーションで設定した検査数は, 実際の検査数より小さい。 擬症状の被検査者数を推定し,実績の検査数に基づいた分析が必要である。 ここでは行動制限期間中の集会頻度を一定と仮定している。 制限の緩和の度合いと感染者数・重症患者数推移の関係についての分析が必要である。