非接種クラスタ分布の生成

著者:畝見達夫 作成: 令和3年5月11日

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ で用いる, 非接種クラスタ分布の生成方法について説明する。

世界は正方形の領域と仮定する。世界内の位置は2次元の直交座標系で与える。 以下,分布パターンの生成方法と,パターンに従った個体属性の決定方法について述べる。

分布パターンの生成

世界の中にクラスタが複数存在するものとする。 各クラスタの中心位置をできるだけ一様な正方格子の頂点上に配置する。 クラスタ数が \(N_c\) のとき,\(i\; (i\in\{1,2,\ldots,N_c\})\) 番目のクラスタの中心位置 \((x_i,y_i)\) を下記の式により決める。

\[ (x_i,y_i) = \left(\left(((i-1) \mod n) + \frac{1}{2}\right)\cdot\frac{w}{n},\; \left(\left\lfloor\frac{i-1}{m}\right\rfloor + \frac{1}{2}\right)\cdot\frac{w}{m} \right) \]

ここで,\(w\) は世界の1辺の長さ,\(n, m\) は横および縦の格子数であり次の式に従う整数である。 \[ n = \left\lceil \sqrt{N_c}\right\rceil, m = \left\lceil \frac{n}{N_c}\right\rceil \]

パターンに従った個体属性の決定アルゴリズム

設定パラメータとして非接種個体の数を \(N_a\) を与え, 各クラスタにほぼ均等に非接種個体を割り当てることとする。 各クラスタについて,既に配置された個体群から中心位置に近い方から順に個体を選び, その属性に非接種であるという情報を追加する。

下に集団サイズ \(90,000\)個体,非接種個体数 \(N_A = 27,000\),クラスタ数 \(N_c = 17\) の場合の分布の例を示す。 青い点が接種する個体,赤い点が非接種個体である。 左側は個体の分布が一様の場合,右側は偏りがある場合である。 各クラスタに同数の非接種個体を割り当てるため,個体密度の高い場所ではクラスタの半径は小さく, 密度の低い場所では半径は大きくなる。

個体の分布が一様の場合 個体の分布に偏りがある場合

シミュレーション実験では,クラスタの定量的影響を調べるため,パラメータとしてクラスタ率 \(\alpha_c\) を用意し,全人口の中での非接種個体数 \(N_A\) のうち,\(N_a=\alpha_c N_A\) 個体がクラスタを形成し, その他の \(N_A-N_a\) 個体は,クラスタ外に接種個体群とともに均等に分布するものとする。 下に,個体分布が一様な場合においてクラスタ率が異なる場合の分布を示す。

\(\alpha_c=0.2\) \(\alpha_c=0.4\) \(\alpha_c=0.6\) \(\alpha_c=0.8\)