著者:畝見達夫 作成: 令和4年7月27日,編集: 8月2日.
SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ で用いる, 家族構成の生成方法について説明する。
東京都の人口統計に基づき, 世帯人数および世帯内年齢構成を設定する。 「東京都世帯数の予測」の概要 1 から, 全体の世帯数は,人口の 1/2。 カテゴリー別の世帯割合いは以下のとおり。
単独 | 夫婦のみ | 夫婦と子供 | ひとり親と子供 | その他 |
---|---|---|---|---|
48.3% | 16.8% | 22.9% | 7.5% | 4.4% |
また,平成29年度東京都福祉保健基礎調査『東京の子供と家庭』の結果2 の概要から, 子供のいる世帯での子供の人数の分布は以下のとおり。
子供の人数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人以上 |
---|---|---|---|---|---|
世帯の比率 | 40.8% | 44.3% | 12.9% | 1.8% | 0.3% |
ひとり親世帯 | 76.0% | 22.7% | 1.3% | 0.0% | 0.0% |
両親がいる世帯 | 37.9% | 46.0% | 13.8% | 1.9% | 0.3% |
さらに,年齢別の人口比は,住民基本台帳による東京都の世帯と人口3 より年齢別に設定する。
家族内の年齢および年齢差について,以下の4つの条件を導入する。
上記の条件を満たすように,以下のアルゴリズムにより世帯を構成する。
ageList
を作成する。nFams
を作成する。nFams
内のデータをもとに,子供の人数の条件から,
ひとり親世帯および両親のいる世帯のそれぞれについて,子供の人数ごとの世帯数のリスト
nKidsS
と nKidsP
をそれぞれ作成する。ageList
から条件に合う年齢範囲の個体を,各年齢の残り人数に比例する確率で選ぶ。nFams
内の単独世帯数を引いた人口を 8 で除した商を8人世帯の数とする。上記アルゴリズムは,個体の確率的選択を含むため,場合によっては条件に合う個体が残っていない可能性がある。 そのような場合は,年齢構成を無視して条件にあう年齢を乱数により生成する。 実際には上の数値を使ったアルゴリズムの実行で,そのような条件を満足しない場合はほとんど発生しない。
帰宅行動を実現するため,各個体には独自の自宅位置を割り当てる。 家族構成個体に割り当てる自宅位置は,家族内の構成個体間の距離が個体直径と同じ, つまり,互いに接するように設定する。世帯人数ごとに以下のような位置関係をとる。
異なる世帯間の距離について,自宅位置の重複を避ける必要があるが, ランダムに配置したのでは,偶然の重複を避けられず, 人口密度がやや高い場合には,無視できない確率で重複が発生する。 これを避けるため,世界を正方格子(あるいはほぼ正方に近い直方格子)に分割し, それぞれの正方領域の中心に世帯を配置することとする。 密度が一様でない場合は,密度の高い箇所では格子間隔を短く,低い箇所では長くする。
「東京都世帯数の予測」の概要, 2019, https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/03/28/33.html. ↩
平成29年度東京都福祉保健基礎調査『東京の子供と家庭』の結果, 2018, https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/10/31/13.html. ↩
住民基本台帳による東京都の世帯と人口, 2021, https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/juukiy/2021/jy21q10601.htm. ↩