BA.5および対策緩和の影響#2

作成: 令和4年7月19日,編集: 7月22日,創価大学理工学部 畝見達夫

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

6月下旬から新規陽性患者数が増え始め,ほぼ全国的に急上昇中であり,第6波を越える傾向にある。 ワクチンの4回目接種が始まったが3回目接種率が50%程度にとどまっている。 今後、空調利用による換気の悪化,熱中症を懸念してのマスク着用率の低下, 夏休みによる外出の増加などが予想される。

シミュレーション

ワクチン効果および感染による獲得免疫の効果を見直し、下記のとおりモデルに反映した。

  1. ワクチン接種による感染予防効果:
  2. オミクロン株感染による獲得免疫の感染予防効果:

前回同様,東京都の新規陽性患者数推移に適合するよう,人流やツイッターの分析結果を参考に, 集会や人の動きの変化を調整する。 7月16日以降の人の行動について4段階を想定し8月末までのシミュレーションを行う。 ワクチン接種及び感染履歴の状況を反映した2021年11月26日時点を想定した16とおりの集団から, 各4試行,計64とおりのシミュレーションを実行し,新規陽性患者数等について,それらの平均値と標準偏差を見る。

新規陽性患者数の推移

東京都をモデルとした新規陽性患者数の推移を下に示す。

2021年11月26日〜2022年8月31日。

2022年6月2日〜8月31日。

7月16日以降の人の行動の活発さの影響は小さく,いずれの場合も, 7月下旬をピークに下がり始めるが,8月上旬以降の降下は緩慢となった。 ピークは7月22または24日に人口の 0.143から0.145% 程度, 東京都の人口に換算すると,約 19,700人程度となった。 8月末では人口の 0.026から0.029%程度, 東京都の人口に換算すると,約 3,600から4,000人程度となった。

感染患者総数の推移

2021年11月26日〜2022年8月31日。

2022年6月2日〜8月31日。

市中の無症状感染者数の推移

2021年11月26日〜2022年8月31日。

2022年6月2日〜8月31日。

結果から示唆されること

直近の状況を踏まえたパラメータの見直しと一部モデルの拡張を行い分析を行なった。 7月末に第6波と同等またはそれ以上のピークに達することが示唆される。 その後、感染者数は減少するが、1日3〜4千人程度で高止まり状態となる可能性が示唆される。

課題

3月の集会頻度が高く設定となったのは、BA.2 を加味していないためと思われる。 変異株スクリーニングのデータから、BA.5 の感染力を調整する必要がある。 重症患者数等についても分析が必要である。