令和3年1月の緊急事態宣言の解除戦略 #2

作成: 令和3年2月8日, 編集: 2月9日, 創価大学理工学部 畝見達夫

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

1月7日に東京都および隣接する3つの県に対して政府から緊急事態宣言が出され, 日毎の陽性判明者数は減少に転じたが,当初の期限であった2月7日までに十分な減少が見込めないとの判断から,栃木県を除く10都府県で期限を3月7日まで延長された。

ここでは,2月7日での解除を前提にした 先のシミュレーションの結果を踏まえ,解除時期を2月16日,26日,3月8日とした場合についてシミュレーションを行う。

シミュレーション

20日目から集会頻度を30%,40% あるいは 50%抑制し, 抑制開始から30+n×10日後に当たる60, 70, 80日目から抑制の割合を徐々に0%に変化させ, 0%に戻るまでの日数を 0, 3, 7, 10, 14, 21, 28, 42, 60 の 9 通りに変えて, 推移の違いを見る。

パラメータ値の一覧はこちらを参照のこと。

抑制率3通りと解除日3通りの組み合わせで計9通りについての陽性判明者数の推移の20試行の平均を示す。

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緑の太線は,東京都における陽性判明者数の週平均で,感染に関わる人口を800万人と想定した場合の比率である。 緊急事態宣言下での陽性判明者数減少の速度を見ると,40%以上の抑制が達成できているものと推測できる。 上の図中,下段中央の 40%抑制 3月8日解除の場合を下に再掲する。

80%

下に感染者数の推移を示す。

80%

全シミュレーションについての個々の推移はこちらを参照されたい。

結果から示唆されること

全シミュレーション結果を見ると,再拡大するケースも見られるが,平均としては 3月7日から徐々に制限を解除すれば感染の拡大をかなり抑制できると考えられる。

新型コロナウイルスの感染拡大には, 平均気温 5ー11℃の乾燥した気象条件で感染が起きやすいとの 気温依存性も指摘されている1。 上記のシミュレーションには今後生じるそのような要素を加味しておらず, ワクチンの早期の接種開始と迅速な接種実施が望まれる。


  1. Mohammad M. Sajadi, Parham Habibzadeh, Augustin Vintzileos, et al, Temperature, Humidity, and Latitude Analysis to Estimate Potential Spread and Seasonality of Coronavirus Disease 2019 (COVID-19), June 11, 2020, JAMA Netw Open. 2020;3(6):e2011834. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.11834, https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2767010