3回目緊急事態宣言解除およびその後のシナリオ

作成: 令和3年5月31日, 創価大学理工学部 畝見達夫

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

令和3年3月下旬から大阪・兵庫を中心に発生した第4波の流行拡大は, その後,東京,愛知,福岡,岡山,広島等に波及し, 北海道,沖縄でも急速な感染拡大が発生した。 4月上旬より,流行地域に順次,まん延防止重点措置が発令され, 下旬からは緊急事態宣言へと規制の強化がはかられた。 東京などでは当初の解除予定は5月末であったが,陽性判明者数は減少したものの, 医療逼迫を回避するほどまでに届かず,5月28日に,6月20日まで宣言を延長することが決定された。

一方,医療関係者から始まったワクチン接種は5月初旬より高齢者等を中心に全国での接種が進みつつある。 緊急事態宣言下での行動制限とワクチンの効果により,5月末時点では感染者数は減少しているが, 6月20日に解除した場合,その後に控える東京オリンピックとの関連を注視する必要がある。

シミュレーション

人口規模 64万人について,人口分布を含めたのパラメータ設定を 偏りが緩慢な人口分布でのワクチン接種戦略 と同様の設定で, まず,東京都の陽性判明者数推移の実績に適合するようシナリオのパラメータを調整する。 規制に対する行動変容の緩み等を第3波と同様と仮定する。 ワクチン接種については,全国の実績をもとに,それを近似する接種率の推移を導入し, 6月末には,1日あたり人口の0.4%に1回目の接種が実施されるものと仮定する1。 接種の優先順位については,医療関係者から先行接種が始まり, その後高齢者を中心に接種が進められている状況を反映するため, ランダムな順で接種を開始し,5月10日以降は移動や集会参加の活動が不活発な人を優先する順序に変更する。 解除後の集会頻度について,a. 第3波と同様,b. 1.5倍,c. 2倍 の3とおりの場合それぞれに64回の試行を行う。 下に平均値と標準偏差の推移を示す。

結果から示唆されること

上の図からワクチン接種が順調に進み,かつ, 緊急事態宣言解除後の人々の動きを今年3月の解除時程度に抑制できれば, 大きなリバウンドは起きないと期待できるが, 集会頻度が1.5倍以上になった場合は,オリンピック開幕直前に再度の宣言が必要となる可能性がある。


  1. 現在,政府が掲げている1日100万接種は,2回接種が定常化した段階では1回目接種が半数の50万件となる。これは日本の人口 約1億2千5百万の 0.4% に相当する。