ワクチン接種 #3(修正版)

作成: 令和3年3月1日, 修正: 3月6日, 創価大学理工学部 畝見達夫

注意:3月5日までのワクチン接種に関するシミュレーションで,確率計算の式に一部間違いがあり, 1回接種後数日で80%ほど抑止効果が出る設定になっていました。 以下のシミュレーションは,それを修正し計算をやり直した結果に基づいています。

SimEpidemic 個体ベース感染シミュレータ 技術文書

背景

先のシミュレーションの結果を踏まえ, 先のワクチン接種に関するもの と同様のシミュレーションを実施する。つまり, 緊急事態宣言下の集会頻度が27%から1.25%に縮小し,徐々に上昇して2月末で2.5%と仮定し, 緊急事態宣言解除と一般へのワクチン接種開始の時期の組み合わせについて, 1日あたりのワクチン接種数の違いによる感染の変化についてシミュレーションを実施する。

ワクチン効果のモデル

ワクチンの効果については, Pfizer-BioNTech が自社のワクチンについて令和2年12月に公表した治験結果1 にもとずき, 接種から効果の推移を以下のようにモデル化する。たとえば,効果95%とは, 同じ量のウイルスに暴露した場合,ワクチンを接種した \(N\)人のうち新たな感染者が\(K_w\)人, ワクチンを接種していない \(N\)人のうち新たな感染者が\(K_n\)人とすると \(K_w/K_n=0.05\) という意味である。 VaccinePfzBNT.svg

シミュレーション

緊急事態宣言を3月21日のに解除し, その後の集会頻度が4%,5%,6% あるいは 8%となったと仮定し, 一般を対象とするワクチン接種開始を4月1日,5月1日,6月1日の3通りについて, それぞれ,1日あたりの接種数を人口の0.2%, 0.4%, 0.6% の3通りについて 各40回のシミュレーションを実施する。 パラメータは先のシミュレーションと同じ設定である。 緊急事態宣言解除までの二乗誤差の意味で最も平均に近いケースからの継続の推移をシミュレートする。

下に代表的な例として,5月1日ワクチン接種開始の場合の陽性判明者数の推移の平均を示す。 解除後の集会頻度は,上から 4, 5, 6 % である。

以下に全ての場合を示す。

集会頻度 4% の場合(2月末の1.6倍,年末の14.8%)

接種開始陽性判明者数の推移感染者数の推移
4月1日
5月1日
6月1日

いずれの場合も感染者数がワクチン接種開始までほぼ平衡状態であり, 接種開始から減少し終息する。

集会頻度 5% の場合(2月末の2倍,年末の18.5%)

接種開始陽性判明者数の推移感染者数の推移
4月1日
5月1日
6月1日

集会頻度 6% の場合(2月末の2.4倍,年末の22.2%)

接種開始陽性判明者数の推移感染者数の推移
4月1日
5月1日
6月1日

結果から示唆されること

集会頻度をリバウンドが起きない程度に抑えられれば,ワクチン接種とともに終息に向かうことが可能である。 逆に,リバウンドによる再拡大にワクチン接種が間に合わなければ, 緊急事態の再度の宣言が避けられなくなる。 ワクチン接種開始まで如何に拡大を抑制できるかが鍵であることは確かである。


  1. Pfizer and BioNTech, FDA Briefing Document Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine, Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting December 10, 2020, https://www.fda.gov/media/144245/download